あこがれとそうぐう
「あと、あたしやるから…しろーちゃんご飯作ってぇ。お腹空いたや」
「何でも良いのか?けど、もうちょい後でな。まだ動く気になれないからな」
むつと冬四郎は箱が沢山の中で座り、ただぼんやりとしていた。
「来るんじゃなかった」
冬四郎が呟くと、むつも頷いた。
「それにしても…筋金入りって篠田さんみたいな人を言うのかしらね?」
「だろうな」
二人がくたびれ果て、休憩していると玄関の開く音が聞こえた。
「ただいま…」
むつは這いずるようにして顔だけ出すと、おかえりなさいと言った。疲れてるむつの顔を見て、篠田は首を傾げながら入ってきた。
「篠田さんのコレクション凄いですね…こんなにあるとは思いもしませんで。で、こっちに出したのが所謂、本物ってやつですよ」
ジャケットを脱ぎ椅子にかけ、ネクタイをゆるめながら歩いてくる篠田をむつはしげしげと眺めていた。
「どうかしましたか?」
「ふーん、かっこいいなぁと思って」
「か、からかわないでくださいよ。わたしなんて、とてもとても」
篠田は少し赤くなりながら、むつの前に膝をついた。そして、むつの指示で冬四郎が引っ張り出した箱を開けてみている。




