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うたげ
「ひっ…あ、あ…いやぁぁぁぁっ‼」
むつがぶんぶんと手を振り回して、ゴキブリと鼠を払い落とすと同時に、囲炉裏の火がばちっとはぜた。
「やばっ…伏せろ‼」
山上が言うと、囲炉裏の火が大きくなり爆発したかのように部屋中を駆け巡り、オレンジ色の炎がうなりをあげて、通り抜けていった。
「あーもー‼無理無理無理無理無理無理っ」
炎の事など気にもしていないのか、むつはバタバタしながら、帯をほどいて浴衣を脱ごうとしている。
「お、おい、むつ‼」
しゅるっと浴衣を脱ぎ捨てて、むつは背中を払うようにしている。冬四郎が慌てて、下着姿になったむつを隠すようにしていたが、隠せる物がない。おろおろしていると、京井がジャケットを脱いで冬四郎に向かって投げた。
京井のジャケットをむつの肩にかけた、冬四郎はむつに落ち着くように言っている。
「無理無理無理っ背中に入ったって‼」
「もう、居ないから大丈夫だ」
ジャケットの中に手を入れて、冬四郎がむつの背中を撫でている。
「本当に、居なくなりましたね」
祐斗は部屋を見回していた。




