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あこがれとそうぐう
むつが気になるという箱を上げたり下げたり、いい加減冬四郎は腰も腕も痛くなってきていた。
冬四郎に指示を出しながら、むつは箱を外に出して中身を確かめ、やっぱり違うとか言い戻している。
「なぁ…終わるのか?」
「当たりが出るまで引くのよ。ほら、身体鈍ってるんじゃない?次、その黄色っぽい箱の下のやつ」
「えーまじかよ…鈍ってるとか関係ないだろ。疲れたぁ休憩しようぜ」
「じゃ、それだけ取って。そしてら休憩…って今何時だろ」
むつはポケットの携帯を出して時間を見た。
「何時だ?」
「もぅ夕方くらいよ…17時」
「そりゃ疲れるし腹も減る‼」
「そうね。言ってる間に篠田さんも帰ってくるだろうね…こさめちゃんにまで手が回らなかったな」
むつが残念そうに言うと、いつから居たのかドアの所にこさめが座っていた。
「あら、また様子見かしら?」
「はぁー休憩」
冬四郎は箱を置くと、そのまま床に座り込んだ。腰が痛むのか、腰を叩いている。
「ん?こさめ、おいで」
手を伸ばした冬四郎の方に、こさめは歩いていく。そして、埃っぽい手の臭いをかぐと、ぷいっと顔を背けた。
「嫌われた」




