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よろず屋-その日常-  作者: 幹藤 あさ
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うたげ

京井自らが運んできてくれた料理は、かなり豪華だった。鯛が尾頭付きで1匹乗せられて膳だった。むつもこさめも裏返して、しっかりと身を平らげていた。京井には、こういう物は表だけを食べるから贅沢なんですよと笑われた。だが、むつもこさめも勿体無いと言っていた。


膳が下げられ、囲炉裏の火で徳利を温めていた京井は、落ち着かないようでちらちらと外を見ている。


「ね、もしかして…そろそろ?」


「夜になりましたからね。気になります」


「そうだね…けど、そう思うならお酒出さない方が良いんじゃないの?」


「まぁ、そうなんですけど。やっぱり、ゆっくり過ごしても頂きたいですし。むぅちゃんもどうですか?」


むつは1本貰うと言い、徳利とおちょこを持つと、中庭の見える縁側に向かった。障子と窓を開けて、座るとひんやりとした風が頬を撫でた。


「夜風は冷えるぞ」


冬四郎がどこから持ってきたのか、ブランケットをむつの肩にかけた。そして、隣に座ると手酌で呑み始めた。むつも手酌で酒をついで、ちびちび呑んでいる。その間に、京井がやってきて膳を置きその上に徳利と灰皿、漬け物を置いてすぐに立ち去った。


「京井さんは良い人だな」


「人じゃないけどね。あんだけ気遣われると流石に申し訳なくなるわ」


むつは袖からタバコを出すと、ゆっくりと吸い始めた。


「こういう場所なら煙管のが似合うのかな」


ふふっと楽しげに笑い、むつは中庭を眺めている。室内からの明かりが届く範囲でしか見えないが、玉砂利の敷かれた趣のある庭のようだった。

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