うたげ
「よお、西原。どうした?」
「どうしたって…むつにメール送ったんですけど。返事ないって事は読んでもないって事か」
西原は眠たそうに、大欠伸をするむつをちらっと見た。むつは西原の声が聞こえたのか、携帯を見ている。そして、椅子に座ったまま振り返った。
「今、見たよ…って、あ」
飽きれ顔の西原をほっといて、むつは他にも来ていた連絡があったのか、携帯を耳に押し当てている。
「あ、もしもし?ごめんなさい…今、気付いて…え?あ、そう…分かった。待ってますね」
「誰か来るの?」
西原と山上にコーヒーを渡した颯介は、むつが電話し終えると聞いた。
「うん、遥和さん。もう来るよ」
むつがドアの方を見ると、とんとんっもノックの音がしてドアが開いた。そして、大柄な男が2人入ってきた。
「こんにちは」
大柄で少し近寄りがたい雰囲気だが、優しげな笑みを浮かべている男、京井 遥和と少しつまらなさそうな顔の男、宮前 冬四郎が入ってきた。
「何でしろーちゃんも?」
「西原君とここで待ち合わせ。で、たい焼き屋で京井さんと偶然会ったんだ」
「そうなんですよ、差し入れをと思って買いに行ったら、宮前さんもいらしたんです」
そう言うと、京井はまだ温かい紙袋をむつに渡した。冬四郎も同じ所の紙袋を、むつに渡すと奥に入っていった。




