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あこがれとそうぐう
少し話をし、篠田が仕事で出ていくと入れ違いのように、冬四郎が帰ってきた。
「あ、おかえり。しろーちゃんってまぁまぁマイペースだよね、人の家に泊りに来ててジョギングって」
「だってさー」
冬四郎の汗びっしょりの顔をふいて、キッチンでごくごくと水を飲んでいる。
「やる事ないだろ?俺が居るからってお前の仕事はかどるわけじゃないし、身体動かさないと鈍るし」
汗で濡れたTシャツをむつが、ぺろっとめくるとうっすらと割れた腹筋がみえた。
「捲るな‼ちょっと太ったんだから」
「呑みすぎでしょ?朝ご飯しよ。汗臭いからシャワー浴びてきてよ、そしたらお手伝いして」
「ん?臭いか?…臭いかぁ」
とぼとぼと風呂場に向かう冬四郎をむつは、不思議そうに見送った。
ゆっくりと朝食を取った二人は、片付けをしてベランダにタバコを吸いに出た。
「で?出たのか?」
「出た。女が篠田さんの寝顔を覗き込んでた。ついでに、あたしも見られた…あれは嫌な感じだったわよ。息苦しかったし」
「それ篠田さんには?」
「言わないよ。不安がらせたら、また寝不足になりそうだし…今朝は顔色良かったよ」




