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ゆめのうち
「あ、そのトマトのやつ限定のだ」
「えっ‼」
すぐ横から声がして、颯介は驚いて頭を上げようとして棚で頭をぶつけた。だが、痛くはなかった。むつが寸前の所で棚と颯介の頭の間に手を差し込んでくれていた。
「大丈夫?」
「俺はね…むっちゃんは手大丈夫?ごめん」
「ううん、急に声かけたあたしが悪いよ。ごめんね…けど、そんなに驚かれるとは」
くすくすと笑うとむつは少し赤くなった手を伸ばして、トマト味のカップラーメンを取り出した。
「あたし、これにしよっかなー」
「むっちゃん、お弁当じゃないの?」
お湯が沸いてくると、むつはタバコを口にくわえてぴりぴりとフィルムを剥がして蓋も剥がした。
「うん。まぁね、お弁当半分こしよ。んで祐斗のカップメン食べよ…それか、颯介さんお弁当にする?足りるか分からないけど」
「……そうしようかな。貰ってもいいなら」
「良いよーっ」
むつはカップラーメンにお湯を注いで、残ったお湯でお茶をいれた。お茶は、むつの好きなほうじ茶だった。




