よっつのこわい
そんなに重たくはない荷物を持ち、むつがよろよろと歩いて行くのを冬四郎は、後ろから眺めていた。そして、自分の荷物とトランクから出した紙袋を持つと、むつの後についていった。
「今度はエレベータ止まらずに済んだね」
ふわふわと欠伸をしながら、むつは部屋の鍵を開けてドアを押さえて待っている。冬四郎に先に入れという事らしい。だが、冬四郎は入りにくそうにしている。
「入らないの?」
なかなか入らない冬四郎をいぶかしみつつ、むつは先に入ると来客用のスリッパを出した。
「お、お邪魔します」
おずおずと入ってきた冬四郎は、静かにドアを閉めてスリッパをはくと部屋に入ってきた。
「あーっ疲れた」
奥に入ったむつは、荷物を置いて部屋に引っ込んですぐに出てきた。あっという間に着替えを済ませたらしい。
「何してんの?座ったらいいのに」
「俺も初めて来たな、お前の部屋」
「はー?この前のガサ入れで来たんじゃないの?」
「俺は来てない。嫌だったからな」
ふーん?と返事をするとむつはキッチンに立ち手早くコーヒーをいれる準備をしている。そんな姿を見ながら冬四郎は、首を傾げた。
「お前、熱は?」
「寝たらちょっと楽になった」
「なら、看病いらないだろ?」
「まぁね。けど、またには良いでしょ?どうせお互い様独り身だし暇なんだから一緒にご飯でも、さ」
冬四郎はがしがしと頭をかいて、忘れないうちにと大きな紙袋をむつに押し付けた。
「なーにー?」




