よっつのこわい
「あのね、うちに来てくれるのは嬉しいけど突然は止めて欲しいし、誕生日の時に外食連れてってくれるのも嬉しい。でも、お店でバースディケーキ出して貰ったりとかはもぅ恥ずかしいし、生クリームあんまり…なの」
むつはもじもじしながら、そう言っている。大した事ではない内容だが、むつからしたら大した事なのだろう。父親の反応を気にしているようだ。
「あ、むつは生クリーム嫌いだよね」
「突然来られるのは、むつじゃなくても嫌だと思うな。散らかってたりしたら、なぁ」
「うん、それにそろそろ子離れしてあげなよ?むつだってそろそろ30だよ?」
兄たちが口々に言うのを、冬四郎はうんうんと、頷きながら聞いていた。聞きながら、むつが帰省したがらない理由は養女だから、以外にもあったんだな、と思っていた。
「…分かった。お母さんにも言っておくよ。けど、なぁ…念願の女の子だからどうしても、な」
父親はそう言い、ゆっくり立ち上がった。そして、よろよろと椅子に戻っていった。
「とにかく、むつ。帰省してきなさい。言いたい事も今みたいに言いなさい。はぁ…何かもっと話したい事あった気がしたがもぅ今日は良い。下がりなさい、お母さんが待ってるから。あとは冬四郎と話をしなきゃいけない」
「しろにぃと?」
むつが泣き腫らした目を、父親と兄たちに向けた。最後に冬四郎に目を向けると、冬四郎は明らかに嫌そうな顔をしている。
「冬四郎は説教だよ。むつも聞いてくかい?」
1番目の兄が少し可笑しそうに言っていた。
「しろにぃ怒られるの?何で?」
「さぁ?さ、むつは母さんとお昼の支度しておいで」
3番目の兄が近付いてきて、むつの手に飴を持たせた。そして、追い出すように書斎から出した。




