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よっつのこわい
オイルトリートメントをぬり、もう1度櫛を通して冬四郎は、苦労しながら長い髪を三つ編みにした。
「長いと三つ編みにしても長いな」
疲れたように冬四郎は言ったが、むつからの返事はなかった。目を細めて、外を見ている。外ではまだ雷が鳴っている。
辺りを見渡せるのでないかと思う程に明るく光ると、どんっと心臓に響くような音がした。そのたびに、むつはびくっと肩を揺らした。だが、目はしっかりと外に向けられていた。
「ありがと」
とりあえず言いました、といった感じで言いむつは立ち上がると障子を開けた。雨足も強くなってきてるのか、大粒の雨が窓を叩いている。
肩にかけていた冬四郎の上着に袖を通している。外に出るつもりだな、と冬四郎は思った。
「しろーちゃん」
むつに呼ばれた冬四郎は、トリートメントでぬるつく手をタオルで拭いて立ち上がった。
「どうした?」
「落ちるよ。近くに」
「何が?」
「雷」
そんな事が分かるのかと、冬四郎は聞きたかったがむつが、そう言うならと何も言わずに一緒に暗い空を見上げていた。




