よっつのこわい
女の子は眉間にシワを寄せた。冬四郎は言い訳をしようとしたが、それより先に女の子がすっとドアから離れた。
「外で待ってようか?」
「え、いや…入っていいぞ?」
だが、女の子は入ろうとはしない。その視線は少し下に向いて、冬四郎の方を見た。
「あの、下くらいはいてきてくれたら…入ろうかな?」
冬四郎は女の子の視線を気にして下を見た。バスタオルを腰に巻いてるだけなのに、気付いた。
「あっ‼悪い本当に‼待っててくれ」
ドアは閉めずにスニーカーで押さえ、慌てて部屋に入り下着とデニムをはいた。ボタンを止めながら玄関に戻り、ドアを押さえていたスニーカーを取り、女の子に中に入るよう促した。
「お邪魔します」
よそよそしく女の子は入ってきた。デニムをはいてるのを、ちらっと確認し明らかにほっとしている。
「むつ、怒ってるか?」
むつと呼ばれ女の子。義理の妹にして、よろず屋という冬四郎の世話になった先輩のやっているへんてこな会社に勤めている、玉奥むつ(本当は宮前だが、本人は養女になる前の名字を名乗っている)は、少し唇を尖らせた。
「怒りはしないけど恥ずかしかったし目のやり場に困ったわよ、もう‼」
肩に下げていた鞄をばしっと冬四郎に投げつけたむつは、ほんのりと頬が赤くなっていた。
「悪い。人が来る事は滅多にないからな。コーヒー飲むか?」
「うん…あ、自分でやるよ」
「良いよ。やるから、座っといてくれ」
冬四郎はリビングの方を指差し、キッチンに向かっていった。何かして落ち着かないと、いけない気がしていた。




