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ちぇんじんぐ
「本物を見てあててください」
「くぅ…難しい」
男は、じっと目を凝らしている。
5人並んだこさめは、無表情のまま微動だにせず立っている。男と一緒に振り向いたむつ(祐斗)も、どれが本物なのか分からない。
「触るのはありかね?」
「篠田さーん、このおじさんが彼女に触りたいそうですが、いかがなさいますか?」
祐斗の判断出来る事ではないので、篠田に聞くと篠田は、きっぱりと首を振った。
「絶対にダメです。触った時点で痴漢行為で逮捕します」
「くっ…無理だ。分からない」
男が悔しそうに、顔を歪めるのを見て祐斗は満足そうに口の端を持ち上げた。
「答えは…」
祐斗は、ぱちんっと指を鳴らした。すると、本物のこさめを残して後は、むつが普段から使っている人形に戻り、はらはらと落ちた。
「引き分けですね」
「式神か…なかなか上手いねぇ」
「こさめさんありがとーっ。次は、そっちですよ」
祐斗は地面に落ちた4枚の人形を拾うとポケットにしまった。




