あこがれとそうぐう
篠田のマンションに着くと、冬四郎は慣れた様子で地下の駐車場に車を停めた。それみ見ながら、本当に来た事あるのか、とむつは納得していた。
車を降りたむつは、冬四郎が篠田を起こしてる間に自分のと冬四郎の荷物をトランクから出した。
「篠田さん、大丈夫ですか?」
顔色の冴えない篠田は、それでも冬四郎の手を借りる事なく立っている。
目をしょぼしょぼさせながら、篠田は頷くと身体を引きずるようにエレベータの方に歩き出した。
エレベータをおり、篠田が玄関を開けた。篠田がドアを押さえて、むつが入るのをまっていたが、むつは少し躊躇った。
「むつさん?」
「…あ、はい。すみません、お邪魔します」
出してくれたスリッパをはき、むつと冬四郎は篠田に続いて室内に入った。
部屋は綺麗に片付いてる、とまではいかないがきちんと整理整頓はされていた。
「あんまり、じろじろ見ないでくださいよ。ここ最近、まともに片付けてないので…今、お茶を…コーヒーで良いですか?適当に座っててください」
眠って少しはすっきりしたのか、篠田はキッチンに入るとお湯を沸かし始めた。
座っているように言われたが、むつは何に興味を示しているのか、本棚を見たり置いてある小物を手に取っている。




