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あこがれとそうぐう
むつは目をぱちぱちさせ、冬四郎の横顔をじっと見つめた。
「何だ?」
「ちょっと意外だった。下手したら首飛んでたかもしれないのに、後悔ないって言い切ったから」
「いや、資料の持ち出しくらいじゃ首飛ばないだろ…むしろ、不正を正した結果…ってのはあり得たけどな」
「あー警察組織にとって不利なってやつで?国民からしたら英雄扱いされても、なんだね」
冬四郎は苦笑いを浮かべた。
「お前、ドラマの見すぎだ」
「え?違うの?」
ぬっと大きな手を伸ばし、冬四郎はむつの頭をぐしゃぐしゃと撫でた。むつはその手を叩こうとしたが、先に引っ込められた。
手櫛で髪の毛を整えながら、むつは溜め息をついた。
「そろそろ、着くぞ」
高速の出口を抜け、冬四郎は何の迷いもなく運転し続けている。むつは、それも疑問に思った。
「何で、そろそろ着くって分かるの?ってか、地図もカーナビもなしで、目的地行けるんだ?」
「そりぁ篠田さん家、行った事あるもん」
「何で?」
「しょっちゅうじゃないけど…非番の前日に呑んだりするからな。篠田さんと山上さんとたまに、西原君も」
「男子会ですな…それこそ、意外」




