ちぇんじんぐ
二人が遅刻ギリギリに出社すると、颯介と山上が揃って、おや?という顔をした。
「おはよ…」
颯介は何か言いたそうだったが、言葉を飲み込んだ。その代わりに山上が、にやっと嫌な笑みを浮かべた。
「一緒に遅刻しそうだなんて、若いねぇ。朝からナニしてたんだ?」
その言葉を聞き、祐斗がきっと山上を睨んだ。まさか、祐斗に睨みつけられるとは思いもしなかった山上は、驚き言葉を失った。颯介もそんな祐斗の様子に驚いている。
つかつかと山上のデスクに歩み寄った祐斗は、ばんっとデスクを両手で叩いた。
「くっだらない事言わないで‼そんな場合じゃないのよ‼分かる?」
「え?いや…分からない、です。はい」
山上は両手をあげて、降参ポーズをとり、颯介とむつに視線を向けた。
「良い?聞いて、あたしはむつなの‼」
しばらく沈黙すると、山上が耐えきれなかったかのように、ぷっと吹き出した。
「むつはあっちに居るだろ?お前は祐斗だよ、鏡みせてやろうか?」
「鏡なら朝見たわよ‼違う‼中身が入れ替わってるの‼見た目は祐斗でも中身はあたしなの‼」
何を朝から言ってるんだ、という顔をした山上。尚も祐斗が何か言おうとすると、颯介が祐斗と山上の間に入った。
「落ち着いて。コーヒー飲む?そう…出張中の看板出して、向こうでゆっくり話しようか?ね?むっちゃん看板出しといてくれる?」
「うん」
むつに言ったはずが、祐斗が返事をしてドアの所に看板を出しにでていった。
「なら、俺コーヒーいれますね」
と、むつがキッチンに入っていった。




