みなうちに
3人にからかわれた冬四郎は、少しばかり拗ねたような顔をしていた。だが、それも可愛いと山上はまだ言っていた。
「あーぁ…宮前さん玩具にされちゃって」
「たまにはいいでしょ。普段って、わりととっつきにくいっていうか、真面目すぎる所あるもん」
「…それもそうか。それにしても本当に嬉しいな。宮前さんが泣いてくれるくらいに思ってくれてただなんてな」
「お兄ちゃんは情に篤いの。篠田さんともさ、仕事抜きで呑んだりしてるみたいだし。この前もね、昼から呑み歩いてたんだって」
「あの篠田さんと?へぇ…宮前さんってさ、階級とか関係なく付き合いする人だよな。上司でも嫌いなら嫌いってなるし」
「そうそう、誰とでも表面的には仲良くするくせにね。仕事上ってやつもあるんだろうけど…わりとわがままよ」
「はっきりしてるだけだろ?協調性あるし、慕われてるし…かっこいいよなぁ…お前の周りはいい男ばっかりで、目が肥えるだろ」
「とっても。だから、理想ばっかり高くなる」
「…止めてくれ」
西原が溜め息をつくと、むつはくすくすと笑った。そして、珍しく顔を赤くして照れて、からかわれている冬四郎を面白そうに眺めていた。
「あ、こさめは大丈夫だとして…菜々と祐斗はどうなったんだろ?何か聞いてる?」
「チョコ貰ったっての、祐斗君の様子からして幸せいっばいってのは分かったぞ」
「そっか。良かった」
「むつの特別仕様は親父さんになんだってな?」
「うん。美味しかったって連絡きたんだ」
へへっと嬉しそうにむつが笑うと、それが少し妬ましくも思えた。だが、この前の一件から家族仲が、今までよりも良くなったように思えると、それは西原にとっても嬉しかった。
むつは笑みを浮かべながら、首元を触っていたが、ふっとテーブルを見た。そこには何も言わない人形が、ボールペンを抱えてあぐらをかいて座っている。どうやら、書き終えたのに誰も気付かないから、ヘソを曲げているようだった。
「あ、ごめんごめん。今度、ぺら子にも差し入れするからね。よしよし、ありがと」
取り成すように、むつが頭を撫でてやると、人形はこくこくと頷いていた。
「ペットだな…で、何だって?」




