みなうちに
「ほれ、さっさと探してこい」
「うん。先輩ありがと…って…え?」
西原に礼を言い、明るくなった事務所に足を踏み入れたむつは立ち止まった。パスケースがあるとすれば、机の上かロッカーの中だろう。だが、むつは入って行こうとはしない。それどころか、眉間にシワを寄せて山上の方を向いた。
「…また入られたみたい」
「何っ!?」
また入られたという意味が、どういう事なのか分かった3人は、険しい表情を浮かべた。山上はむつを下がらせると、事務所に足を踏み入れた。冬四郎と西原も続いて中に入ると、ぐるっと辺りを見回した。3人供、現場を荒らしてはいけないと思ってか、ドアの近くから中を見渡すだけにしている。
「…そんなに、うちに狙いをつけて何がしたいんだ?1日で2回もってなると、悪質な嫌がらせとしか思えないぞ」
「そうですね…誰かから恨みを買ってるか、ライバル会社…があるわけないか」
冬四郎がそう言うと、山上はばしっと冬四郎の頭を叩いた。ライバル会社があるはずがないとも言い切れはしないが、先ずあるとは思えない。山上もそれは重々承知だった。だとすると、悪質な嫌がらせとしか思えない。
「悪質な嫌がらせでも、鍵はしまってますし窓も割られたりしてませんからね。やっぱり、人じゃないんでしょう?」
西原は目を細めて、慎重に辺りを見ていた。
「…むつ、山上さんと倉庫見てみたらどうだ?また何かされてるかもしれないからな。通報するにしても、その後でもいいだろ」
「うん…」
意外と真剣な表情の西原に言われたむつは、山上と共に小走りに倉庫に向かっていった。




