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よろず屋-その日常-  作者: 幹藤 あさ
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みなうちに

事務所の入っているビルに戻ってきたむつは、暗くなると不気味だわと呟いている。普段から出入りしている者でもそう思うという事は、冬四郎や西原にとっては尚更だろう。口数の少なくなった2人は、来慣れているはずの場所だというのに、あちこち見回している。


「うわ…もう非常灯しかついてないや」


薄暗い明かりの元でも、慣れているようでがちゃがちゃと鍵を開けた。だが、真っ暗な室内に入るのは躊躇われるようで、少し開けたドアの隙間から手を伸ばして電気のスイッチを探している。


「…ひっ‼」


スイッチを探していたむつが、悲鳴をあげて手を引っ込めた。そして、何か変な物にでも触れたかのように、ズボンでごしごしと手を拭いている。


「何だ?ゴキブリでもいたか?」


「…違うっ‼毛があるやつ‼ふさって、さわさわってしたもん‼」


いやー気持ち悪いとむつは、ごしごし、ごしごしとしつこいくらいに手を拭いている。


「ネズミでも居たんでしょうか?」


西原はむつの手を取ると、自分のハンカチでしつこく拭いている方の手を、ごしごしと拭いてやった。


「…お前さ、夜仕事するわけだろ?人気のない所にも行くくせに。何でそうもダメなんだ?そういう所だとネズミもゴキブリも出るだろ?」


「綺麗なイメージないもん…ゴキブリはさ、頭と胴体が離れても死なないのよ‼胴体は動くのよ‼動かなくなった時は餓死なんだって‼ってなったら、頭は何の為にあるの?ってなるじゃん‼怖いっ‼きもいっ‼」


大人しく手を拭かれながらも、むつはきぃきぃと熱弁している。西原は、はいはいと言いながら、むつが気が済むというまでハンカチで、丁寧に手を拭いていた。


「仕方ねぇよ。むつも女の子なんだから」


山上は笑いながら、むつの代わりに電気のスイッチを探し当てると、ぱちぱちとつけた。

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