みなうちに
むつと西原が肩を並べて、あれこれと他愛のない会話をしながら歩いている後ろを、少し離れて山上と冬四郎が歩いていた。
「…何だかんだ仲良いよな、あいつら」
「そうですね。むつも楽しそうですし」
「妬かないのか?」
「…むつが選ぶ事ですから」
「お前は遠慮がちなんだよ。だからチャンスを逃すんだぞ?むつも優柔不断なのが良くないな…寂しがりなのは人一倍で、誰とも離れたくないんだろうけどな」
「やっぱり、あれですかね…玉奥の身内が誰も居ないからなんでしょうか」
「お前、本当に誰も居ないと思ってるのか?」
「…え?もしかして、居るんですか?何で…山上さん、何か知ってるんですか?」
「調べろ、ばか」
そう言うと、山上はずんずんと歩いていき、むつと西原の間に割り込んだ。西原は文句を言っているが、むつは笑っているだけだった。そして、その笑顔のまま冬四郎の方をちらっと見た。目が合うと、むつはすぐに顔を背けた。目を反らされた事が、どういう意味なのか分からない冬四郎だったが、山上を追い掛けていくと、むつと山上の間に割り込んだ。
「うわ…宮前さんまで‼寂しくなったんすか?」
「あぁ。そういう事だ」
「なっ…山上さんといい宮前さんといい…応援してくれるんじゃなかったんですか?」
「…そんな話した事あったか?」
「ないですよ」
当然だと言わんばかりの西原に、くっと冬四郎は笑った。冬四郎は珍しくも自分から、むつにくっつくようにして近付いた。むつは寒いのか、冬四郎の腕にぴったりとくっついていた。




