みなうちに
暖房をつけて戻ってきたむつは、寒そうにしている。つけたばかりだから、すぐに暖かくなるわけではない。それは分かっていても、つけただけで気持ち的にマシと言えるものだ。
「…やっぱり倉庫の方がひんやりするね。あっちのが暖かい」
「日当たり悪いからじゃねぇか?倉庫で何かするわけじゃねぇからな。体温で暖かくなるって事もねぇし」
「うん…皆、寒いよね。ストーブ置いてあげたいけど、危ないもんね」
「…そうだな」
人ではなくても寒い物は寒い。そうと分かっていても、何もしてやれないとむつがしょんぼりすると、山上はほんのりと笑みを浮かべた。何に対しても優しすぎるむつは、だから傷つきやすいのだと山上は分かっていた。だが、そんな事は言わない。それがむつの良い所だからだ。
「ね、とりあえず片付けしよ?このまんまじゃ何にも出来ないし。この子たちもこれじゃあんまりだわ」
所定の位置にないだけではなく、折り重なって置かれていたりもする。そのままでは、扱いが雑すぎるとむつは言っている。
「それもそうだな。俺の出番は無しで、むつ倉庫頼むぞ?西原もこっちな」
「えー」
「さむーい」
「…西原、お前言う事がむつにそっくりになってきたな。声聞いてなきゃどっちがどっちか分からなくなりそうだ」
「似た者夫「違う」
みなまで言わせないむつの否定にもめげない西原は、くすくすと笑うと床に落ちている箱を拾い上げた。




