みなうちに
「…山上さんも置いてある物の位置を把握してるんですか?」
「…?当たり前だろ?事務所内の事だ。どこに何があるかなんて覚えてるに決まってるだろ?それに毎日見てるんだ、位置が変わっていれば違和感あるだろ」
「確かに…」
むつといい山上といい、物を置く位置にはこだわりがあるのかと冬四郎は思っていた。2人供がさつで雑なイメージがあるが、意外にも神経質な所が似ていた。
「…お兄ちゃん観察力ない?」
「ないかもしれないな」
「それで仕事してて大丈夫?」
「これがやり手刑事だなんてな」
「うるさい、ほっといてください」
むつと山上から非難を浴びせられた冬四郎は、もう何も言うまいと口を閉じた。
「みやはほっとくとして…さて…どうしたもんか。何かあったんなら話してくれたらいいんだけど「ふえっくしっ‼」
「…何だよ、寒いのか?」
山上がぶつぶつと言っていると、むつが盛大にくしゃみをした。そして、ずずっと鼻をすすった。あまつさえ、あーと低い声を出していて、おっさんのようになっている。
「寒い…寒いのかなぁ?」
「知らねぇよ。暖房…そういや、つけてなかったな。つけてこい」
「うん」
いまだに上着を脱いでいないむつは、ぱたぱたと事務所内の暖房をつけた。すぐに暖まるようになのか、強風にしたようでごぉっと風の音が聞こえてきた。
「…寒いですよ、この事務所の中は」
西原も上着を脱いでおらず、寒いと腕をさすっていた。だが、山上と冬四郎は平気な顔をしていた。




