みなうちに
せっかくのコーヒーもそこそこに、山上は先ずは自分の目で確かめるか、と呟いた。
「よし、とりあえず倉庫を見るか。むつ、ついてこい。場所が変わってるって言ってたな?確認するか」
「はいっ‼」
むつが元気よく返事をすると、山上はきょとんっとした顔をした。だが、すぐにくしゃっと笑うと立ち上がった。
「…お前が素直に指示に従ってくれると、やりにくいぞ。でも…現役の時にこんな可愛い部下が欲しかった」
「俺も素直だったと思いますよ?」
「みやも素直だったな。顔には不服ですっていうのが出る時もあったくらいにな」
「あー…分かる分かる。お兄ちゃん態度が顔に出ちゃうもん」
「あー…分かります。意外とポーカーフェイス下手な時ありますからね」
むつと西原が同時に言うと、冬四郎はしかめっ面をして見せた。うるさいと言いたげに、手を振ると山上を追うように立ち上がった。2人の言い方がそっくりで、同じ事を言ったのがどうやら面白くないようだった。
「…素直なんだか素直じゃないんだかよく分かんない人だわ」
「お前とそっくりだ」
「兄妹だからね」
ふふっと嬉しそうに笑ったむつは西原と一緒に、後から2人を追うようにして倉庫の中に入っていった。




