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みなうちに
冬四郎が山上とこそこそと話している間に、ドアからはまた1人の男が入ってきた。そしてやはり、冬四郎と同じく止められている。むつが声をかけようとしたが、それよりよ先に男がむつに気付いた。そして、軽く片手を上げた。
「…何だ、西原まで来たのか。お前らは何だ?暇なのか?」
身分を明かして警官から解放された男、眼鏡に短髪の西原駿樹はへへっと笑うだけだった。だが、刑事として働く冬四郎と西原が暇なのは、平和な証拠でいい事のような気もすると、むつは思っていた。そして何よりも、2人が来てくれた事が嬉しくて仕方ない。
「むつ。お前なぁ…こいつら呼んだな?」
「呼んだ‼だって、警察なんてアテに出来ないもん。それに…何か嫌だったし。早く出てって欲しい」
呼んだというのに、警官たちには早く出ていって欲しいと言うむつは、心底そう思っているようで、盛大な溜め息を漏らしていた。




