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みなうちに
「…食べ過ぎた。お腹重たいから動けない」
一人前を完食した。否、完食するように強要されたむつは苦しいと呟きながら、ちんたらちんたら歩いていた。隣を歩く山上は涼しい顔をしており、そんなむつを見ては笑っていた。
「動けてるから大丈夫だ。それに動いてるうちに消化されるからな、頑張れよ」
「あたしは低燃費なの。なかなか消化されない。ガソリンも満タンにしたら車体が重たくなるのと同じ。バランス悪くなる気がする」
「…でも、こけないだろ?」
「スピード出ない。後はカーブで傾くの怖い」
「危ないな。でもお前は、スピード出なくていいし、カーブでも傾かないから大丈夫だ」
「何かあっても走れないからね…」
「飯屋から事務所の短い距離で何かあるわけねぇ…事もねぇか」
山上が立ち止まると、むつもつられたように立ち止まった。短い距離で何かあるわけないと言ったくせに、何を見付けたのかとむつは山上の視線を追った。




