みなうちに
「…今度ね」
ほぐした焼き鯖をもそもそと口に運びながら、むつは呟いた。すでに食事を終えている山上は、すっかり冷めたお茶を飲みながらむつを見た。
「酒井さんにお墓教えて貰って行ってこようと思ってるの…まだ1回も行った事ないのに助けてくれたし」
「そうか。お礼は言わないといけないからな。それに、娘の姿は見たいだろうしな…お前は報告する事が沢山ありそうだしな」
「まぁ…はい…あるかな」
「西原の事がとかな」
味噌汁を口にしていたむつは、ごふっとむせた。両親の墓の前で、何故西原の話をしなくてはならないのか。それに、西原との何を報告するというのか、むつには分からず、ごほごほとむせながらおしぼりで口を拭いて。テーブルに溢した味噌汁を拭いた。
「…ちゅーした仲なんだろ?お前、帰ってきてから西原と会ってもないな?西原が仕事忙しいですか?なんて聞いてきたぞ。連絡してやれよ、可哀想になってくる」
「まだ会ってないけど…まぁ…そのうち」
「そのうちじゃなくて、早めにな。お前らの仲はよく分からねぇな。付き合えばいいのに…お前も満更じゃねぇくせに」
「………」
「…何だよ?新たな問題が浮き上がったか?」
「…そんな所。社長は分かってそうだけど」
「…分からねぇな。そんな事より、さっさと食えよ。掃除、今日中に終わらなかったら、どうするんだよ?今日は湯野ちゃんも祐斗も来ねぇんだからな」
山上に言われたむつは、急ぐように残っている白飯を口につめこんで、もぐもぐと一生懸命に口を動かした。




