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みなうちに
不機嫌そうなむつだったが、選んだメニューが目の前に並ぶと、あっという間に笑顔となっていた。2人が入った店は、お洒落な所ではなく、本当に食堂という場所だった。だが、カフェのお洒落なランチなんかより、白いご飯と味噌汁の出てくる店の方がむつは好むというのを、知っている山上はむつの機嫌も直ったと見ていた。
「あ、美味しい…ここ初めて来たけど。もっと早く連れてきて欲しかったな」
漬け物をぽりぽりと噛みながら、白飯を頬張るむつはそれだけで幸せといった顔をしている。
「2人の時、一緒に飯に出る事なんかなかったからな。そういやぁ、湯野ちゃんにも祐斗にも教えた事なかったな、ここは」
「そーなの?あたしが初めて?」
「そういう事になるな。みやと西原とは来た事あるけどな」
「えー…1番じゃなかったや」
自分が1番最初ではないと知ってか、がっかりしたようなむつではあるが、それでもいい店を教えて貰えたと喜んでいる。
「…ちっとは、食欲戻ったか?」
「………」
味噌汁をすすりながら、山上はちらっとむつを見た。むつは何と答えるべきかと悩んでいるのか、箸の先を唇に押し当てている。




