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あまいゆうわく
「どう?似合う?」
「…たぶんな」
「何よ、その返事は」
「いいのか?親父からのは?」
「うん?捨てないよ。実家に帰る時にはつけ変える。あとは気分とかでさ」
「女の子はそんなもんだな。所でお前、怪我の具合はどうなんだ?」
「うん…まぁまぁかな…治りは遅いけど」
「そうか。早く治せよ」
「ん…後ね。次の休みに坂井さんと会おうかなって思ってるの。玉奥の両親のお墓参りに連れてって貰おうかなって」
「…いいんじゃないか。お前が行きたいなら」
「うん。行ってきたら、お父さんとお母さんには話すよ。行ってきたって…言えるか分かんないけど、そのつもり」
「言えそうなら報告してやればいい」
むつはこくっと頷いた。そんなむつは、ふうと息をついた。他にも冬四郎になら話せるかとも思ったが、そうでもないようだった。冬四郎もむつには聞きたい事があったが、それは止めておこうと思いながら、むつの首元のネックレスに目を向けた。




