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あまいゆうわく
寒い、寒いと戻ってきたむつは部屋から、水の音が聞こえてくると、おやっという顔をした。
「おかえり、早かったな」
キッチンでは冬四郎が、くわえタバコをしながら洗い物をしていた。夕飯の片付けを後回しにしていたむつは、冬四郎がそれをしてくれていると分かると嬉しそうな顔をした。
「下までだもん。楽出来ちゃって助かる」
「片付けくらいはな…で、俺に居残りさせた理由はなんだ?片付けをさせる為か?」
「んな、わけないでしょ?」
冬四郎に並んで立ったむつは、泡が流れて、きゅっと鳴る綺麗な皿を布巾でくるくるも拭いて、食器棚に片付けていく。
「じゃあ何だよ?」
「ん、ちょっとお願いがあってさ」
「俺にか?」
「…他に頼める人居ないもん」
むつはそう言って、小皿とフォークを残して後は全て片付けた。
「ちょっと座ってて」
冬四郎をキッチンから追い出したむつは、小皿に何かを乗せると冬四郎が隣に座った。




