あまいゆうわく
食事が終わり片付けは後回しにしてと、むつと菜々はキッチンにこもって何やら、ごそごそと始めている。祐斗は冬四郎と共に、ソファーに座ってのんびりとテレビを見ている。
「…谷代君は菜々ちゃんを寮まで送るつもりなのかな?」
「え?あ…そのつもりで居ますけど…」
「そうか。なら、いいか」
「何が、ですか?」
「遅いから菜々ちゃんが1人で、帰るつもりならタクシーに詰め込むか、むつにバイクでって思ってたからさ」
「でも、むつさんは怪我してますよ?」
「まぁな…でも、菜々ちゃんが1人でって言い出したら、あいつはそうするよ」
「ですね。何か…羨ましいです。むつさんと菜々さんの仲って特別すぎて…」
「あー…それは仕方ないよ。本当に幼馴染みだからな。良いも悪いも分けあってきて、言っちまえば2人で1つみないな所があるからな」
「宮前さんは小さい頃の菜々さんをご存知ですもんね。それも羨ましいですよ」
「…祐斗君は今の菜々ちゃんが好きなんだろ?なら、それでいいんじゃないか?」
冬四郎がタバコをくわえて、火をつけようかと悩んでいると、むつがキッチンから綺麗にした灰皿を持って来て置いていった。




