あまいゆうわく
米を炊くのは面倒くさいと、むつは大きな鍋を取り出すと、たっぷりと水を入れてコンロに置いた。
「…どお?渡せそう?」
「うん、貰ってくれるって…むつ、コインランドリー行かせてくれて、ありがと。色々話が出来たよ」
「そのわりには、自信無さそうね」
「何か…夢みたいって感じ?実感なくて」
「それもそっか。でも夢じゃないでしょ」
「うん…むつのおかげ」
「今度、ゆっくり聞かせてね?」
むつはタッパーに切った人参を入れると、電子レンジにいれた。その間に、ブロッコリーも切っていく。
「あ、菜々。ベーコンと卵だして。ベーコン炒めたら、スクランブルエッグして」
「はぁい」
菜々は言われた物とフライパンを出した。むつが、ベーコンを切って菜々が炒めてと、2人の息はぴったり合っている。
「あ、ついでに、冷蔵庫から何か出して。祐斗は仕事終わりで空きっ腹かも…つまめるもの出してあげて」
「むつのそういう気がきく所いいわね。先輩がいまだにむつを好きなのがよく分かる。人遣い荒いけどさ」
「…うるさいわよ」
菜々はくすくすと笑いながら、冷蔵庫からタッパーを取り出すと、小鉢に丁寧に盛り付けて、小皿と箸と共に呑んでいる2人に持っていった。




