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よろず屋-その日常-  作者: 幹藤 あさ
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あまいゆうわく

篠田とこさめが戻ってくると、むつは再び冬四郎と篠田にあれこれと指示を出した。


「なぁ、むつ…」


「やりながらでも説明出来るから、手を動かしなよ。帰るの遅くなっちゃうよ?」


ジップロックにビスケットを入れて、綿棒で細かく砕いていた冬四郎は、納得出来ないと言いたげな顔をしているが手は止めない。それに、大きさがまちまちにならないようにと、丁寧にやっていた。


「あのね、この時期多いのよ。去年もそれで忙しくなったから覚えてる」


「…チョコが動くのは季節柄か?」


「そんな季節はない。そうじゃなくってさ、バレンタインの時ってわりとそわそわする人多いでしょ?特に女の子は」


説明をしながらも、むつは冬四郎と篠田の手元を見ながら、次はこうしろと指示を出すのを忘れない。


「好きな人に渡したい。でも、渡せる子ばっかりじゃないのよ…渡す前に、相手の男の子に好きな人が居るって知ったり、彼女居るって知ったり…勇気が出なくて渡せなかったり、色々な理由でね。そういうのがね、まぁ…マイナスの感情ってやつ?悲しいとか悔しいとか…それらがさ、溢れる時なのよ。でね、今回は…まぁ…うちにも1人そういう感情を持ってたのが居たのよ。それで、あたしとこさめって普通の人とは違うでしょ?だから余計に、そこらじゅうに漂ってたマイナスたちを引き寄せちゃったのよね」


「…つまり?」


「菜々のマイナスの感情とあたしらの引き寄せで、そこらじゅうに散らばってた…まぁ、思念体ってやつよね。それが、チョコに憑いちゃったの。ちょうど、うちにはチョコいっぱいあったし。それで、こうしたかったっていう願望を持って動いちゃった結果。そうね…ちょうど男も居たし。で、その男たちは器も大きくて、自分を受け入れてくれるって、この子たちも思ったんだろうね」


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