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よろず屋-その日常-  作者: 幹藤 あさ
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あまいゆうわく

理由は分からないが、むつに指示された通り、冬四郎はキッチンからボウルを出してきて、篠田に2つ持たせた。大きいのは、4つもあるはずがなく大きいのと小さいのを2つずつだった。


「…ボウルいっぱいあるんだな」


「勿論。泡立て器もフライ返しも2つはあるわよ?お兄ちゃん家にはないの?」


「ない。あっても大小1つずつだ。まぁいい…それより、こんなの持ってどうするんだ?」


むつは、うんっと頷いただけだった。あまり説明をしないという事は、あまりいい予感がしない。冬四郎は篠田と顔を見合わせて、嫌そうな顔をしていた。だが、むつはそんな2人には構わない。ただ、祐斗、菜々、こさめに危ないからおいでと手招きして、いそいそと離れていく。


「お、おい、むつ…危ないって何するつもりなんだ?俺と篠田さんは危なくないのか?」


「…知らないわよ。2人とも現役の警官。市民を守ってみなさいよ」


ふんっと鼻で笑うように言われると、冬四郎は言葉に詰まった。まだむつの怒りは、どうやら収まっていない。篠田は諦めたような顔で、普段なら指示する側だというのに、むつの指示を待っている。

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