あまいゆうわく
素っ気ない文面で、むつに呼び出しを食らった祐斗は、とぼとぼと廊下を歩いてきた。何かやらかしたのだろうか。怒られる気もすると、思いながら祐斗はドアをノックした。すると、インターフォンにも出た冬四郎が、ドアを開けてくれた。
「あ…もしかしてむつさん居ないんですか?」
「いや、居るよ」
うん、と頷きながらどこか落ち着きない冬四郎は、顔を赤くしている。そんな冬四郎を見た事がない祐斗は、きょとんっとした顔をしていた。だが、寒いからかさっと部屋に入った。冬四郎に続いて、リビングに入って行こうとした祐斗は、ぴたっと足を止めた。
外から来た祐斗の鼻には、尋常ではないくらいの甘い香りは少しキツい。それに、室内だというのに寒い。冷え症で寒がりのむつが、暖房もつけないという事は有り得ないだろう。
「谷代君?」
「あの…本当にむつさん居ますか?」
「あぁ、居るよ。こさめさんも」
「そうですか」
むつもこさめも居ると聞いても、祐斗は余計に腑に落ちなくなった。この寒さは、冬のせいではない。祐斗は、とりあえず確認してみようと、リビングに入っていった。そこには、確かにむつもこさめも居る。こさめはパンツ1枚の姿で、篠田に抱き付いているし、むつも下着姿だった。




