あまいゆうわく
「何でまた…篠田さんのお給料って…」
「菜々…」
生活に困るほど少ないはずがないとむつは、苦笑いを浮かべた。それに、そこまでならば、とっくに仕事を変えていてもおかしくはないだろう。
「あのね…むつも菜々もお仕事してるでしょ?自分で働いたお金で、菜々は祐斗にむつは誰か分かんないけど…チョコあげるでしょ?でもさ、こさめは直弥からのお小遣いだもん…」
「あー…成る程、自分で得た物で贈り物をしたいってわけね。ふぅん…篠田さんってば、愛されてるわね」
砂糖の入っていない生クリームを舐めたむつは、篠田とこさめの仲良しぶりを羨ましいを通り越して、呆れるくらいだった。
「うん。直弥に字は習って読めるし書けるようになったから、履歴書も書けるし」
「…だとしても…篠田さん、反対するんじゃない?こさめが外出するのって、かなり心配してるみたいだし」
「でも急に猫に戻ったりしないよ?」
「安定してきてるみたいだもんね。こっちまで、1人で来た事もあるくらいだし…」
むつもこさめが仕事をというのは、手放しには賛成出来ないと唸っている。社会に出ている妖を知ってはいるが、それらとこさめとでは生きてきた長さも違う。働く事に反対はしないが、もし何かの拍子に正体がバレたとしたら、篠田とも一緒にいられなくなるのではないか。むつはそこまで考えていた。




