あまいゆうわく
むつは焼けたパンを皿に盛り、生クリームを添えて、冷凍庫にあったミックスベリーを散らした。そして、マグカップには溶かしたチョコレートをそそいで、ふふっと笑った。甘ったるにもほどがある、おやつの完成だ。
それらをテーブルに並べると、菜々が嬉しそうな顔をした。甘党の菜々には、もってこいの品々だ。
「むつ、それ何?」
ボールペンを置いたこさめは、すんすんと鼻を鳴らして匂いをかいでいる。そういう仕草は、猫その物かもしれない。
「フレンチトーストとホットチョコだよ。余っちゃったから、使わないとね」
「んーっ‼いい香り‼流石、むつ‼」
「むつって何でも出来るね」
甘い物は嫌いじゃないのか、こさめもぱっと笑みを浮かべた。そして、直弥に見せるのだと言って、携帯で写真を撮っていた。
「いただきまーすっ‼」
菜々はナイフとフォークを使って、一口大に切ったフレンチトーストにたっぷりの生クリームを乗せると、頬張っている。その顔は本当に幸せそうな物で、見ているむつも嬉しくなった。
「…で、こさめは何でまた履歴書なんて書いてるの?てっきり、篠田さんへのお手紙かと思ってたのに」
最初から切り分けてあるフレンチトーストをフォークで刺したこさめは、照れたように首を傾げた。
「うん…お仕事しよっかなって」
そうじゃなきゃ履歴書なんて書いたりしないだろうな、と頷きながらむつもフレンチトーストを口に運んだ。




