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あまいゆうわく
女性が話し出してくれるのを待っている間、祐斗はそろっと部屋の中を見た。あちらこちらから、どんよりとした空気が漂ってきていて、寒くもないのに鳥肌が立ってきた。
何か変な物でも買ったりしたのだろうか。それこそ、これを置いておけば間違いなし、なんて言葉につられて壺でもあるのではないかと、祐斗は本気で怪しんでいた。たが、それらしき物はない。祐斗は、冷気の漂ってくる方を知らず知らずのうちに、目で追っていた。まるで細い糸のようなそれを追っていくと、どうやらキッチンの方からのようだ。
祐斗がちらちらとキッチンの方を気にしていると分かった依頼主は、はぁと溜め息をついていた。
「…分かるんですね?」
「え?あ…はい…何か、向こうから…」
「そうなんですよ…1週間くらい前から、キッチンの方ですすり泣くような声がしたりして…」
「あぁ、それは気味が悪いですね」
そんな陰湿な感じは想像しただけで、遭遇したくないなと祐斗は思っていた。




