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あまいゆうわく
「ねーむつぅーっ‼腕痛い‼これ、ういーんって、がしゃがしゃってするのないの?」
「…ういーんでがしゃがしゃ?」
「…電動の泡立て器の事よ。結構、メレンゲ作るのって大変だわ」
「あー…ない。機械に頼るな。手を動かせ手を。手作りなんだから、手でやりなさい」
「…じゃあ、むつ交代してよ」
腕が疲れたと言い、こさめは卵白の入ったボウルをむつに押し付けた。まだまだ液体状態で、角が立つくらいには程遠い。仕方ないか、と思いながらむつはこさめと交代し、菜々の隣に並ぶとがしゃがしゃと泡立て器を動かし始めた。
「菜々は腕大丈夫?」
「かなり疲れたわよ。だから、左右交代させてやってる…こんなにメレンゲ作りに時間かけてたら間に合わないわね」
「間に合わせるんだよ」
そう言ってむつは、キッチンに行くと氷をボウルに入れた物を持ってきた。そして、その上に卵白の入っているボウルを乗せた。
「冷やしながらのが早い」
「うん、頑張る」
こさめはソファーで休憩しているが、菜々は手を休める事なく泡立て器を動かし続けた。




