1145/1310
あまいゆうわく
祐斗は仕事の確認をして、そろそろ出ようかと支度を始めていた。そんな頃、とんとんっと事務所のドアがノックされ、対応を待たずに開けられた。
「おはようございます」
「あっ…篠田さん」
「あぁ、谷代君。お久しぶり」
入ってきたのは、祐斗もよく知っている篠田直弥だった。篠田が来たとなると、また面倒な事が起きるのではないかと祐斗は身構えた。だが、そんな篠田は珍しくもスーツではなく私服だった。
「よお、意外と早かったな」
篠田が来る事は知っていたのか、山上は時間を確認して、少し首を傾げていた。
「山上さん、おはようございます。こさめを送ってきただけですから…むつさんもまだ寝起きのようでしたし、部屋に上がるのはちょっと…朋枝さんもいらしてましたから女の子ばかりですし」
「そうか…朋枝さんも来てるのか。ふぅん…そりゃ入りにくいな」
「えぇ。むつさん大丈夫でしょうか…疲れたような顔してましたけど…お忙しいんですか?」
「いや?仕事はそうでもないぞ。朋枝さん来てたんなら、遅くまで起きてたんじゃないか?」




