あまいゆうわく
「おっはよーございまーす」
「お、おはよう。早いな」
「おはよう」
「って…社長も早いですね。何かあったんですか?」
「いや、今日はむつ休みだからな。早めに来ておこうと思ってだな」
真面目な事を言う山上にも驚いたが、日曜日だというのに、むつが休みだという事に祐斗はさらに驚いた。そんな話は聞いてなかった気がして、もしかしてまた何かあったのではないかと不安になった。そんな不安が顔に出たのか、颯介と山上は微笑んでいた。
超弱小会社な上に、怪異専門というさらに怪しさがプラスされているだけあって、勤務している者たちは、それぞれに特殊な能力を持ち合わせている。それだけに、何かに巻き込まれると大事となる。ついこの間の問題は、かなりの大事だった。それが片付いたばかりだからか、祐斗の不安は大きい。むつはまだ本調子でもないのだ。出来る事があるなら、嫌がられようともフォローに回るつもりでいた。
だが、そんな祐斗の決意とは裏腹に、颯介も山上も落ち着いている。と、いうよりも言わずともころころ表情が変わる祐斗が何を考えているのか、手に取るように分かるのが面白いのかもしれない。




