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あまいゆうわく
玉奥家と宮前家の問題が片付いてから数日。むつはいつも通りに出社してくるようになったし、ようやく落ち着いた日々を取り戻していた。問題が片付いてから、むつはよろず屋の面々、颯介、祐斗、山上にはきちんと何があったのかを説明していた。むつの方から、こんな報告があるとは思いもしなかったのか、3人は驚きを隠せなかった。だが、それは嬉しい事でもあった。秘密主義のむつから、見合い相手の酒井の正体まで聞けたからか、山上はあからさまにほっとしていた。
「お疲れ様っす」
「あぁ、おかえり祐斗君」
「あれ?湯野さんだけっすか?」
「社長は半日だから。むっちゃんはそろそろ戻ってくるよ。さっき連絡あったから」
「そういえば、そんな連絡入ってましたね」
会社、と言っても規模は小さくアルバイトの祐斗を入れても4人しかいない。事務所を空にする事も、いちいち1人ずつに連絡をするのも面倒くさいからと、グループでの、チャットを導入していた。これで、連絡の不備は減るだろうと、1番連絡をしないむつが提案したのだった。




