ごじつ
完全に外が明るくなってから、西原はカーテンを開けて日差しを部屋に入れると、くぅくぅと眠っている祐斗を起こした。眠たそうにしていた祐斗ではあったが、西原の元気そうな顔を見るとほっとしたかのように柔らかな笑みを浮かべた。何故、祐斗がそんな顔をするのか西原には分からなかったし、祐斗も何も言わなかった。
「ほんなら、谷代君を送ろうか」
「…お前も来るのか?」
着替えを済ませてタバコを吸いながら、西原は片車輪の方を見た。帰省する祐斗を送るつもりでいる片車輪は、妖とは言えどかなり付き合いがいいようだ。
「折角やしな、見送ったらな。それに、ついでやんか?」
「何が?」
「わしも西原君家に近いんやし。西原君が行って帰ってくるんやったら、ついて行ってもや。帰りに1人じゃ寂しいやろ?」
「運転するのは俺だからな…まぁいっか」
寂しいとは言わないが、新幹線の通っている駅までは少し遠い。帰りに1人より、話し続けなかったとしても相手がいた方が、西原としても良いと思ったのだろう。呆れたような口調ではあるが、面倒くさそうでも嫌そうでもなかった。
「お待たせしました。西原さん、ジャージありがとうございました。それに泊めて貰って」
「あぁ、いいよ。こちらこそありがとうな」
何が、ありがとうなのかと祐斗はちらっと片車輪を見たが、片車輪は何も言っていないと、軽く首を振っただけだった。




