ごじつ
祐斗がそんな勝手な事をするだろうかと首を傾げながら、西原はお湯をマグカップに注いだ。そして、ついでのように並んでいる空き缶を見て、こんなに呑んだだろうかと再び首を傾げた。
片車輪は昨夜の事を説明する気がないのか、しきりに首を傾げている西原を見ても知らん顔している。
「ほら、ブラックでいいか?」
「お、さんきゅさんきゅ」
マグカップを渡された片車輪は、笑みを浮かべながら真っ黒い液体を見ていた。
「で、本当に俺が先に寝たからって呼ばれただけなのか?何かあったんじゃ…」
「…どうやろうな。まぁあれや、そのうち誰からか話は聞くやろうから待っとけ。それより、今日から谷代君は帰省なんやってな?駅までは送ったりや?ほれ、荷物も持ってきてあるしな」
片車輪が指差した方を見ると、いつの間にか大きな鞄が置いてある。祐斗と合流した際には、祐斗はそんな物は持ってきてなかったはずだったが、寝ている間に取りにでも行ったのだろうか。自分が寝ている間に、何があってどうなっているのかと西原は不思議で仕方ないという顔をしている。
「まぁ…分かった。祐斗君を駅までは送るつもりで居たしな。で、昨日何があったんだ?」
「…そない知りたいか?」
「知りたいな」
すでにしっかりと目が覚めているのか、西原はコーヒーを片手に真面目な表情を浮かべている。話した方がいいのかと、片車輪は悩みながらコーヒーを見つめていた。




