ごじつ
「…っう」
寝返りをうった西原は、寒そうに布団を引き上げて頭までかぶった。早めに寝たつもりではあったが、寝不足なようで寝足りない。もう一眠りしようと思ったが、ばさっと布団をはがされた。
突然の出来事と寒さに、西原は驚き跳ね起きた。昨夜は祐斗が泊まったが、祐斗がそんな事をするとは思えない。薄暗い室内で、仁王立ちするようにして布団を掴んでいる者を西原は睨み付けた。だが、眼鏡がないせいなのか視界がはっきりとはしない。それでも、布団を持っている者が祐斗ではない事だけは分かる。
いつの間にか、誰かに侵入されていた事だけはすぐに理解出来たのか、西原は素早く膝を立ててすぐに動けるようにした。
「…何や?寝起きはえぇんやな。すぐに警戒して動ける辺りはさすがやな」
聞き覚えのある、酒焼けのようなしゃがれ声に関西弁。まさかと思ったのか、西原は驚いて何も言えず動けずに居た。
「まだ寝惚けとるんか?それともその状態で寝てもうたか?」
おーい、と言いながらひらひらと顔の前で手を振られると、鬱陶しいと言いたげに西原はその手を振り払った。
「…片車輪?」
「せやで、おはようさん」
「…おはよう」
暢気に挨拶をされ、西原もとりあえずといった感じで挨拶を返すと、どうしたものかと部屋を見回した。




