ごじつ
『先輩を起こして‼』
「はいっ‼西原さんっ‼西原さんっ‼」
祐斗は携帯を置くと、西原の肩をつかんでがくがくと揺さぶってみた。だが、それだけされても西原は起きる気配を見せない。普段の西原の寝起きがどうかは知らないが、警官という職業に就いているのだから、何かあればすぐに起きそうなのに、西原は起きない。
「むつさん…ダメです。起きません…」
『もう…結構すぐに起きる人なのに…ね、祐斗協力者増やそう。このまんまじゃどうにもならないよ…』
「ですが、どうやって?湯野さんも帰省してますし、社長はたぶん旅行ですよ」
『うん。知ってる…知り合いの妖を呼んできて。居るでしょ?強面だけど面倒見よくて、先輩と仲良しな妖が1人』
むつの言葉を聞き祐斗は首を傾げた。むつに妖の知り合いが多いのは知っているが、西原もいつの間にかそんな知り合いが出来ていたのだろうか。
『片車輪よ‼海の方に向かいながら、叫んだら出てきてくれるから、呼んできて』
「あっ…はいっ‼あ、でもここオートロック…」
『玄関に靴箱あったでしょ?その上に灰皿みたいなやつがあるから、その中にキーケースも置いてるはず。昔と変わらなければ』
祐斗は西原を寝かせると、玄関に向かった。ぱちぱちと電気をつけて、むつに言われた場所を見ると、浅い皿のような物の中に、使い古してるようなキーケースがあった。祐斗はそれを掴み、上着を着るとばたばたと部屋から出た。
真夜中に1人で外に出るというのは、少し怖くもあったが、そんな事を言ってられる状況ではない。祐斗は携帯を握り締めたまま、夏に訪れた事のある海の方へと走っていった。




