ごじつ
西原を取り囲むようにして、ふよふよと漂っている物たちの密やかな声は、祐斗の耳にかろうじて聞こえてくる。だが、それは途切れ途切れだった。言葉を発しているようで、途切れ途切れなそれはなかなか分からない。
『…斗、祐斗ってば』
「あ、はい…はい?何ですか?」
集中していた祐斗だったが、携帯から聞こえてきたむつの声に我に返った。
『ノイズが凄い…こっちにまで微かに聞こえてくる。かなりの量が居るんじゃない?』
「電話越しにも分かるって事は相当な、って事になりますね…量はかなり…西原さん埋め尽くされちゃいそうです」
『…危ないわね。ね、ビデオ通話にして。あたしも様子を少し視たいから』
真剣なむつの声に、祐斗は言われた通りにビデオ通話に切り替えた。すると、すぐに画面にむつが現れた。余裕にも、ひらひらと手を振っているし、すぐ側には灰皿と缶ビールが置いてある。何か飲んだのは、ビールだったようだ。そんなむつの、のんびりとした緊張感もかけられもない様子に、祐斗は溜め息をついてしまった。
「むつさん…」
『おひさーって2日ぶり?まぁまぁ、焦って構えても仕方ないからさ。ほら、それより部屋の中見せてよ?』




