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ごじつ
電話をしているはずなのに、むつの気配がなくなったような気がして祐斗は少し不安にもなった。耳から携帯を離してみると、ちゃんと通話中になっている。
「…むつさん?」
『何?何て言ってるか分かった?』
「あ、いえ…むつさんが居なくなったのかと思って」
『…おばか、ちゃんと居るから。よぅく耳を澄ませて聞いてみなさい』
「はい」
やんわりと厳しく言われた祐斗は、少し携帯を耳から離した。むつが勝手に電話を切ったりしないと分かっているからか、祐斗は両耳をよく澄ませてみた。
ぼそぼそした声は聞き取りにくいうえに、ざりざりと雑音が入っているような感じがしていた。集中していないと、雑音にばかり気を取られてしまいそうだった。




