ごじつ
ぎりっと携帯を握っていた祐斗だったが、その携帯と西原とを交互に見た。西原に何かが起きているのは確かだ。だが、それが何なのか分からない。頼りになるむつに連絡を取ろうかとも思うが、時間が時間だった。夜中に電話をするのは気が引けるし、何よりも実家でくつろいでいるはずのむつの迷惑になるのではないかと思っていた。だが、悩むのはほんの少しだった。
かけ慣れている番号を呼び出すと、祐斗は発信ボタンを押した。不機嫌そうだろうと怒られようと、自分だけではどうにもならないと判断したのだ。どうにも出来ない事を恥じていて、西原に何かあってはそれこそ後悔しそうだったのだ。この短期間に、色々と危ない事が起き、しない後悔よりもした後悔という事を染々と感じさせられていたからだ。
そう思うからか、まだかまだかと気持ちが急いてはいるが携帯からは一定のコール音が響くだけだった。しばらくすると留守番電話に切り替わったが、祐斗はすぐに切ると再びかけ直した。すると今度は、ぶつんっと切られた。しつこいとは思いつつ、祐斗はもう1度かけ直した。
『…ばか、こっちからかけ直すつもりだったのに。部屋出るから待ってて』
すぐに出た相手は、かすれた小さな声で言った。不機嫌そうでも怒っている様子でもなく、ただ寝起きですという感じだった。




