1103/1310
ごじつ
「まぁ…そうですね」
祐斗は、しばらく会えないであろうよろず屋の3人を思い浮かべてみた。3人共、確かに恐ろしい。それも祐斗が、試験前だと分かると尚更に怖い。学業を疎かにするなと、山上とむつは言うし颯介は結果を見せろと言うしで、口うるさい親と歳の離れた兄弟のように思える。3人の顔を思い浮かべながら、うーんと悩んで、ころころと表情が変わっていくのを西原は面白そうに見ていた。
「あ、じゃなくて…もう!!」
急に何を思ったのか、祐斗は西原の方に顔を向けた。じっと祐斗を見ていた西原は、柔和な笑みを浮かべただけだった。
「何だよ?そんな事より、祐斗君は明日から帰省するんだろ?そろそろ寝なくていいのか?あ、明日駅までは送ってやろうか?」
「え?」
「いや、暇だし。マンション戻って荷物取ってから帰省だろ?あっしーになってやるよ」
西原からの思いがけない申し出に、祐斗はくりっとした目を真ん丸にしていた。確かに西原に車を出して貰えたら楽ではあるが、それは流石に申し訳なくなる。ましてや、疲れた顔をしている西原には頼みにくい。
「…まぁ俺が元気だったらな」




