あこがれとそうぐう
むつのもっともな言いように、耐えかねたのか、颯介が吹き出した。それを見て、むつが颯介の太股をぺちっと叩いた。
「それだけお疲れの様子なら、そういった夢も見るんじゃないですか?」
「それに篠田さんは、そーゆーのお好きですよね?良かったじゃないですか」
颯介の言葉を引き継ぐように、むつが取りつく島もない様子を見せると、篠田はますます、しょんぼりした。
「まぁまぁ、急ぎ仕事ないなら、見に行ってやってくれよ」
むつと颯介に言った冬四郎は、身をかがめるとむつの耳元で
「俺も付き合わされてんだから。暇潰しだと思えば、さ」
と言った。そう言われたむつは、山上の方を見た。山上も仕方なさそうな顔をしている。
「依頼するなら、むつを派遣してやるよ。ただし、期間は決めるぞ」
もう仕事として引き受けるを前提にしたかのように、山上は篠田を立たせて、先程まで囲碁をしていたソファーに連れていった。
「妖とか霊とか好きなくせに、自分の身に起きると、動揺するのかしら?」
「そうでしょ。普通とは違う事になってたら、誰でも動揺するもんだよ」
むつと颯介は、ぼそぼそと話す声を聞きながら、面倒くさそうにパーテーションの方を見ていた。




