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七市屋探偵事務所~オーパーツ回収なんでも屋~  作者: paranormal
第1章 サイボークと少年
7/7

それぞれの想い

 勇気ら一行は事務所に戻った。

 事務所に戻れたのも例の御厨香苗の手腕でどうにか少年の釈放がなされたのだ。

 現在は事務所にてまず少年と少女アンドロイドが向かい合うようにして立っていた。

 その二人の間に割って中央に立つのは七市勇気だ。

 勇気が手にしているのは『意識刀』。

 それを上に振りあげて祝詞を唱える。


「かしこみかしこみもうす。かけまくもかしこき ななしのしんけい つくしのひむかのたちはなのおどのあはぎはらに みそぎはらえへたまいしときになりませるはらえどのしんけいたち もろもろのまがごと つみ けがれあらむをばはらえたまい きよめたまへともうすことを きこしめせとかしこみかしこみももうす」


 紡がれる祓詞はらえことば

 神話において神棚に捧げる言葉として使われる祝詞。

 その効果はあらゆる呪い、呪物に関連する効果を祓う効能。

 しかし、この祝詞は『七市家』独自の改良を施している。

 結果としてそれは『オーパーツ』の呪いを解呪できる祝詞へ進化した。

 『意識刀』が微振動を起こす。共振し、祝詞に当てられるかのように刀身が煌めきだす。

 事務所内が白一色に染まった。

 しばらくして、少年と少女アンドロイドがうめき声をあげながら「戻った!」「……私の身体っ」と歓喜に打ち震える声を上げた。

 勇気は一呼吸置いて、『意識刀』を収納袋にしまい込み執務机の横に立てかけた。


「さて、西雄太君。君に聞きたいことが多くある。まず一体何があったのか教えてくれるか?」

「わかりました。僕の覚えてる限りのことを教えます」


 西雄太は訥々と語り始めた。

 最初は兄と同じ大学に行くために兄に誘われて大学見学を予定していた。

 しかし、兄はある教授と忙しそうに話をしていたと言う。


「片倉庄司ね。国際日本文化研究センターの教授で歴史学者でもある彼は多くの歴史にまつわる異物を研究していたみたいよ」


 口をはさみ込み、御厨香苗が説明する。

 片倉教授がなにゆえに西司に接触していたのか。


「兄さんは覚えてないの? あんとき教授と一緒にいたこと?」

「えっと……っ」


 西司が顔を顰めてこめかみを押さえる。

 何かの痛みを訴えるかのような仕草だ。


「やめたほうがいい。脳に強制的な消去を受けてる。『オーパーツ』によるもの」


 勇気は教授が持っていた『オーパーツ』を思い出した。


「あの拳銃か」


 あの拳銃が彼の記憶を消去したのだろう。


「あの、続きを話してもいいですか?」

「ああ、すまない。続きを頼む」


 話の腰を折ってしまったことを謝罪し西雄太が話の続きを語る。

 教授と西司が何かの歴史についての話をしていたのを西雄太は傍らで聞いていた。

 しかし、内容はさっぱりで古代の遺物らしいものを見つけたから見てみないかと言うような内容だった覚えがあると言う。


「そのあとは?」

「覚えてません。ただ、そのあとに教授の部屋に行ったような記憶があるんです」

「そうか」


 おおよそのそのあとの展開に勇気は思う。

 部屋において収納ボックスに収まっていたはずの『意識刀』を手に持ってしまった西雄太はそのあとに暴走して放浪する。

 その現象を目の前で目撃した教授と西司。特に兄である彼は止めようとしたが教授がそれを阻止したのだろう。

 あの研究中の男は貴重なサンプルだと称して西司の行動を邪魔し記憶を無くさせるもしくは改ざんさせるような『拳銃』で撃った。

 あの拳銃は物理的な攻撃ともう一つ物理ではない脳の記憶を消去させるだけの弾丸でも持ち合わせているのだろう。


「そんなオーパーツは覚えがないな」


 おおよそ、未回収のオーパーツに違いなかった。


「片倉教授はもう一個その記憶を消去させるオーパーツを所持してるから一般人はむやみに接触を図るのは危険だろうな。特に姐さん無茶な行動は控えてください。片倉教授の身柄は引き渡しますが彼の捕縛は俺が行います」

「わかっている。私には専門外だからな。それでさきほど、連絡があった。片倉庄司が君たちの学園で目撃されたとな」


 勇気は沈思しながらアイリスを見た。


「アイリス一緒に来てくれ。今回はアイリスの力がいる」

「わかった」


 勇気がさっそく出向こうとする。


「……待って……くださいっ」


 ゆっくりと紡がれながらも力強い覇気の声が事務所に響く。

 勇気は立ち止まり、アイリスも止まる。


「……あ、あの……私もお手伝い……します!」

「えっと、君は……」


 そういえば、アンドロイドの少女の名前は聞いてはいなかったことを今さらになって思い出す。

 彼女も今回の事件の被害者であり第2の被害者であった。


「菊嶋花梨……です」

「かりんちゃんか」

「ちゃんづけ……よしてください……これでも……17です」

「17歳っ!?」


 彼女の容姿を今一度見てそうは見えずに衝撃を受けた。

 あまりにも失礼すぎる反応だった。

 彼女の様子を伺えば沈痛した表情を浮かべていた。


「わかってます……こんな……幼児体型……ですから」

「あー、いや」

「ユウキぃ」

「ユウキくん」


 冷血な眼差しで二人の美女に睨まれてしまい身が縮こまる。

 蛇に睨まれた蛙とはこのような気持ちなんだろうな。


「ごめん! 君は十分色っぽい女性だと思うよ、うん」


 弁明の言葉を口にしたがそれが逆に墓穴を掘ったとは気付かない。

 勇気に向けてアイリスの鉄拳がボディーに入った。

 御厨香苗も馬鹿を見るように嘆息する。


「おい、いつまでもバカなコントしてねぇで彼女の話を聞け」

「あ、そうだ。姐さんの言うとおりだ。お手伝いって言ったけどこれは普通の仕事じゃないんだ。君は一度被害を受けてるんだ。ここにいた方が安全だ。ここが嫌ならすぐにでも家に帰す」

「家なんて……ありません」

「は?」


 家をないと言った花梨に全員の視線が集まった。

 どういうことだろうか?


「カリンさんそれはどういうことかきいてもよろしいかしら?」

「……そのままの……意味です……その人に襲われる直前……私は変なピエロのお面をつけた人に襲われ……ました……家も家族も……失いました」

「ピエロの仮面だと!?」


 勇気はおもわず少女に急接近して食い気味になってしまう。

 それを抑えつけるのは御厨香苗と九条アイリス。


「この馬鹿」

「落ち着くの怖がってるよ!」

「あ、すまん」


 あきらかに花梨の表情は勇気におびえ切っていた。

 もう今日で彼女に謝るのは何度目か。


「ピエロが言った……です。もうすぐ……私は……変る……って」

「変る……そうか。『意識刀』の接近を促していたか。ピエロの仮面の仕業か全部! あのクソ野郎が!」

「おい、さっきからなんなんだその『ピエロの仮面』ってのは」


 御厨香苗が件のことを知らずに質問をする。

 勇気は今説明する時間もない。

 どうするか悩みあぐねる。


「彼女には私が説明するかしら。こっちきてくださる御厨さん」

「むっ、そんなに長い話になるのか」

「そうねぇ、長くはないけど彼らはそろそろ行かないとまずいのじゃないかしら」


 アリスの目が出入り口を指し示す。


「アイリスっ!」


 勇気は申し訳ない気持ちを胸にしてアイリスの手を取って走り出そうとしたが強い引力で身動きが取れなかった。

 引力の原点を見た。

 そこには腰にしがみついた花梨の姿。


「お願い……します! 親を殺した犯人……の足取りを掴みたい……手伝わせてください!」

「……」

「ユウキ」


 勇気は彼女の気持ちもわからないまでもなく――


「わかった。ならお願いします。でも、俺の言うことは絶対聞いてください」

「ありがとう……ございます!」

「ちょっとまってくださいよ!」

「それならボクらもお手伝いさせてください!」


 ここにきて西兄弟も口をはさみこむ。

 理由は単純、自分らをひどい目にあわせた野郎を殴り飛ばしたいのだろう。


「姐さーン」


 勇気はもう、たまらず御厨に泣き寝入りする。


「わぁったよ、あたしも同行してコイツらの面倒をみる」

「なら、私もみんなの護衛役としてついていこうかしらね」


 結局、全員で学園に向かうことになってしまう。

 勇気はある程度装備の準備を済ませていざ、彼のいる学園に向かう。



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